プロフィール

写真:武藤一彦氏

武藤一彦(むとう・かずひこ)

ゴルフジャーナリストとして新聞、テレビ解説で活躍。2005年から夏泊ゴルフリンクス理事。2017年理事長就任。他に日本プロゴルフ協会理事、世界ゴルフ殿堂選考委員などを務める。

1964年報知新聞社に入社。ゴルフは国内ツアーはじめ全英オープンなど世界メジャーを取材。スポーツジャーナリストとしてボストンマラソン、プロボクシングの世界タイトル戦なども取材した。

中でも全英オープンゴルフは1977年、スコットランド・ターンベリーのワトソン・ニクラウスの"世紀の対決"以来、数々の名勝負を観戦。リンクスコースへの強い思い入れと造詣で知られる。
1939年生まれ、東京出身。立大時代はゴルフ部。

2016年2月 アーカイブ

がんばったシンタロー、もっと頑張れシンタロー

―開幕戦4位よくやった小林への応援歌―

SMBC 日本ツアーの開幕戦も兼ねるアジアンツアーの「SMBCシンガポールオープン」は2日最終日を行い日本の小林伸太郎が日本勢の最上位となる4位に踏ん張った。大会は、アジアと欧州を結ぶアジアンツアーに日本ツアーも参入した共同開催。日本ツアーは4月の本格開幕と遅いが、この試合を開幕戦と位置づけ日本の賞金ランキングにも加算される。大会には世界ランキング首位のジョーダン・スピースも参戦、世界的にも注目される中、優勝したのは韓国の若手、宋永漢(ソン・ヨンハン)、12アンダーでスピースを1打抑える大番狂わせ。小林も最後まで優勝戦線に加わり日本勢最高の4位と健闘した。

 シンガポールの新しい観光地にある南国情緒いっぱいのセントーサGC(7398ヤード、パー71)で開かれた日本ツアーの開幕戦と言われてもピンと来ないと思うが、雪国・夏泊ゴルフリンクスのメンバー及び日本屈指のリンクスコースファンのゴルファーに向けて、変わりつつある日本のゴルフ界を解明するにはもってこいの機会である。日本、そして世界のゴルフ界はいろいろと様変わりしようとしていることを知ってほしいのでコラムに取り上げた。

 なんでシンタローか。いやこれはもう個人的な好み。応援している。小林伸太郎。07年の日本アマチャンピオン、高校時代は日本ジュニアのタイトルも取ったホープだ。石川だ、松山だと騒ぐ直前、東北福祉大を出た小林もまた将来を期待された逸材。

ナショナルチーム2007

 このコラムでは、たびたび紹介したが、かつて夏泊では、トップアマの日本ナショナルチームの強化合宿を2年間にわたり開催し、小林も、夏泊でひと夏、希望に胸ふくらませて一週間を過ごした。しかし、勝負の世界はホープをそのまま生かさない。小林も順調路線を歩めず苦難の道へ。プロとなり09年「つるやオープ」でデビュー。10年には日本プロ新人戦を制覇したが、4年間,鳴かず飛ばずだった。
 だが、昨年やっと開花した。初夏の日本プロ選手権で優勝争いの自己ベストの4位。順調にツアーで1年間を過ごしシード権には届かなかったが、1500万円余、マネーランキング63位とようやくプロの水になじんできた。29歳の今季は、いよいよ開花と期待する。今大会には夏泊合宿の常連、片岡大育、小平智らナショナルチームのチームメイトも出場したが、先輩らしく後輩を成績で抑えた。今季の飛躍を垣間見た思いだ。

 4位で得た賞金、543万1000円に注目してほしい。他人の懐を覗き見るのはゲスの極み、たしなみにかけるが、プロは稼いでなんぼの世界ということは誰もが知るところだ。小林にとってもシーズン最初の賞金が日本人でトップというのは意味がある。日本ツアーの一員としては目下賞金ランクトップ、この調子で突っ走るぞ~と勢いがつく。今季はいよいよ初優勝を目指し遅まきながらプロ人生のスタートなのだ。

世界に広がるアジア

小林伸太郎 アジアンツアーでの好スタートは世界デビューを視野に広がりを見せる。アジアンツアーは欧州ツアーとの共同主催ゲームが多く次週ミャンマーで行われる「レオパレス21ミャンマーオープン」も共同開催。小林はじめ今回出場の日本選手に優勝シーンへの期待が持てる。
 アジアンツアーのシードを取ると全英オープンなど各国のナショナルオープンへの出場も見えてくる。今大会11位の川村昌弘、片岡大育などは数年前からアメリカより身近なアジアに拠点を置き遠征しているのはそのせい。世界を目指す選択肢はアメリカだけではないことを知っての行動だ。石川、松山に加え岩田寛が戦うアメリカは激戦区で石川、岩田が昨秋、シード獲得に大苦戦したのは誰もが知るところ。しかし、アジアは今、欧州ツアーに直結、地理的にもアジア経由ならその遠さを感じなくなっている。世界への道。そこに欧州とアジアがタイアップした意味があり意図がある。世界はどの道を選んでも身近になったということなのだ。

小林伸太郎 ナショナルチームの合宿で夏泊にやってきた小林とはロビー前のラウンジで話が弾んだ。将来のこと、家族、夢。ただし、その時は歯痛でさえない顔で痛々しかった。結局、プロとなって明るい表情を見たことがないまま昨年、日本プロ選手権で久しぶりの再会をした。関西の居酒屋チェーン店、焼き鳥まさや所属となり関東から大阪住まい。「経済的にも安定、落ち着いてゴルフに取り組めている。今年はやれる」と力強い言葉を聞いてうれしかった。事実、シーズン末にはシード取得目前まで行ったが、惜しくも逃した。日本ツアーは昨年、それまで70位だったシード枠を60位へとひき挙げたことが災いし落選した。言っても仕方ない、要は自分の力不足なのだ。勝負の世界は本当にきびしいと思ったものだ。
 開幕戦を勝った宋は24歳。日本ツアーシード2年目の昨シーズンは日本シリーズにも出場した日本ツアーの新人王だ。世界ナンバーワンのスピースの猛攻をかわした優勝で韓国国内は大騒ぎだろう。いや、女子はプロいうまでもなく男子も世界での活躍が当たり前となった韓国。当然のことと平然としているとしたら、それも空恐ろしい。小林には今回敗れたくやしさを倍返し、いや5倍返しする意気込みで戦ってほしい。

2016年2月3日

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