プロフィール

写真:武藤一彦氏

武藤一彦(むとう・かずひこ)

ゴルフジャーナリストとして新聞、テレビ解説で活躍。2005年から夏泊ゴルフリンクス理事。2017年理事長就任。他に日本プロゴルフ協会理事、世界ゴルフ殿堂選考委員などを務める。

1964年報知新聞社に入社。ゴルフは国内ツアーはじめ全英オープンなど世界メジャーを取材。スポーツジャーナリストとしてボストンマラソン、プロボクシングの世界タイトル戦なども取材した。

中でも全英オープンゴルフは1977年、スコットランド・ターンベリーのワトソン・ニクラウスの"世紀の対決"以来、数々の名勝負を観戦。リンクスコースへの強い思い入れと造詣で知られる。
1939年生まれ、東京出身。立大時代はゴルフ部。

グリーン上、旗を立てたままパットしてもいいですよースロープレー撲滅にいち早く動き始めた世界のゴルフ界。2019年の大幅ルール改訂の話題

 ゴルフが五輪競技に復活したことが影響したのかと思います。ゴルフルールが再来年、2019年の1月1日をもって大きく変わることをご存知ですか?主だった点を列挙するとこんな具合です。

  • グリーン上、旗竿をホールに立てたままパットができます。
  • パットのラインのスパイクマークや傷を修理しても構いません。
  • グリーン上、キャディーさんがプレーヤーの許可を得ずに球をピックアップすることがゆるされます。
  • バンカーでショットした球がはねかえって体に当たっても罰はありません。
  • ラフで球をさがしているときにボールを誤って動かしてしまっても無罰です。

 以上のルールの改正点については、詳しく解説することはここではひかえます。他にもペナルティ区域からのドロップの方法、その際の救済範囲の基準など列挙すれば多々あります。でも今は「えっ?そうなんだ」と受け止めておいてください。その改正には驚きこそすれ、反対ではないと思うので省きます。ゴルフの変革を直感的に受け止めておいていただければ、と思います。なにしろ来年1月、元旦からの事ですから。

 例えばこれまでの、他人がつけたスパイクマークのキズがカップと球の間にデンと居座っても自分の責任として我慢しなければならない理不尽さ。バンカーにいれたら前の組のプレーヤーが直していない足跡に球が入って、それをショットしたら跳ね返った球が自分の体に当たってしまってペナルティが付いた、そんなくやしさをゴルファーなら経験済み。おかしいと思う前にそれがルールと甘受するのが、ゴルフでした。だが、この3月の事でした。

 ゴルフルールを統括するR&AとUSGA(英、米のゴルフ協会)が、そんな現行のルールに大ナタを振るいました。
 ゴルフルールはその伝統と慣習により4年に一回、五輪開催イヤーに改訂していますが、今回のは別途、5年前から準備し、2020年、東京五輪より1年も前の2019年からの実施を決めたのです。
 準備に5年、その実施は1年も早くした背景には、「ゴルフルールを今日の世界的なニーズにかなう状態にする」という大英断があったことは言うまでもありません。

 さて本題です、以上のことは何を指示しようとしているかです。スコアをよくするため?グリーン保護?コースの美化?あ、そうか、ジュニアからシニアまでが一緒にプレーするゴルフだ、ルールの簡略化をはかれば誰でもプレーできる。さらなる大衆化を目指すのですね、という意見も出てきそうです。その通りです。だが、実はそのために解決するいい方法を世界のリーダーたちは考えたのです。

 実は改訂の狙いはスロープレーの撲滅にあります。スロープレーをなくせば、以上あげたゴルフの問題点はすべて解決される。そんな観点から意図したものです。

 冒頭にあげた改正は「プレーのペースの支援」という命題を念頭にしてあります。

201705-1 グリーン上でパットをするとき現行では旗竿を抜いてから打ちます。そのままでもいいのですがルールは旗竿に球を当てると罰が付くからそんなリスクは誰も負いません。遠い球から順に打つことが決まりなので4人のプレーヤーの準備が整うまで延々とグリーン上で過ごす時間は、大相撲の仕切りとともにゴルフの興をそぐ、元凶のように言う人もいます。もちろんあの緊張感がその競技のだいご味であることは理解していっています。しかし、プロの試合ならともかく、普段のラウンドであれをやられるとかなわない、というのは大方のプレーヤーの本音でしょう。

 キャディーがプレーヤ―の許可を得ずグリーン上の球をピックアップすることができるーは中でも今回の改訂では出色だと思います。一組に一人が当たり前になった普段のラウンドではキャディーさんの忙しさは目まぐるしい。昨今は自分のラインを読めない人(?)が多く、4人とディスカッションしなくてはならないキャディーさんの忙しさたるや大変です。グリーンにいち早く上がったキャディーが球を許可なく拾いあげ(もちろんマークして)それをプレーヤーに手渡せば、それで済むこと。プレー時間の短縮にすぐに役立つ、いい方法だと思います。

 プレーペースの支援と言います。今回の改訂は「速やかなプレーについての改革」が強く明記されています。こんな具合です。

  • ロストボールを探すのに許される時間は3分間、現行より2分短くなります。
  • ショットはすべてボールのところに行ってから40秒以内で打ち終わらなくてはならない。

201705-2

そしてー、

  • 「Ready Golf」(レディ ゴルフ)の推奨を強く推し進めています。例えば林の中からの脱出や隣のホールからのリカバリーショットです。リカバリーのためホールに近くてもプレーヤの準備が出来ていれば、用意のできた人から先に打つことを強くすすめていきます。遠球先打が基本のゴルフですが、状況しだいで宣告そして同意を条件にその基本を崩してもよし、とします。
  • さらにバンカーの苦手な人のために、2打罰でバンカーの外からのプレーもできる、という項目も加えられています。

レディーゴルフはReday(レイディー、用意ができた)の意味です。準備ができた者から「お先に行きまーす」と宣告すれば「ハイどうぞ~」―そんな声をかけあってプレーすれば、スロープレーは間違いなく撲滅される。たしかに素晴らしい改善になる。再来年正月を待たずに明日、いや今日のラウンドから。皆さん!スロープレー撲滅と行きましょう。

2017年5月29日

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