プロフィール

写真:武藤一彦氏

武藤一彦(むとう・かずひこ)

ゴルフジャーナリストとして新聞、テレビ解説で活躍。2005年から夏泊ゴルフリンクス理事。2017年理事長就任。他に日本プロゴルフ協会理事、世界ゴルフ殿堂選考委員などを務める。

1964年報知新聞社に入社。ゴルフは国内ツアーはじめ全英オープンなど世界メジャーを取材。スポーツジャーナリストとしてボストンマラソン、プロボクシングの世界タイトル戦なども取材した。

中でも全英オープンゴルフは1977年、スコットランド・ターンベリーのワトソン・ニクラウスの"世紀の対決"以来、数々の名勝負を観戦。リンクスコースへの強い思い入れと造詣で知られる。
1939年生まれ、東京出身。立大時代はゴルフ部。

伝統の理事長杯で史上初めて女子選手が優勝

―男性陣を圧倒したリンクスの異変、チャンピオン斉藤くみこさんの快挙

写真:優勝した斉藤くみこさん 日本を代表するリンクスコース、夏泊ゴルフリンクスの理事長杯が29日行われ、女子選手が並み居る男子選手の強豪をしり目に史上初めて優勝を飾った。毎年恒例の夏泊ゴルフリンクスの理事長杯の決勝ラウンドは5月29日、予選を通過した21人(16位タイ)による最終ラウンド18ホールを行い、ハンデ10の斉藤くみこさんが2日間、140ストロークで2位に3打差をつけて優勝した。大会はアンダーハンデの2日間36ホールストロークプレー。予選(5月22日)を首位と1打差2位で通過した斉藤さんは決勝ラウンドを最終組で優勝争いすると15番で逆転し逃げ切った。斉藤さんは同クラブの女子クラブチャンピオンのタイトル保持者。50歳以上が出場する全国大会である日本ゴルフ協会(JGA)主催の日本女子シニアオープンの常連で63歳。東北を代表するトップレディースとして長く活躍しているが、男性と交じった伝統のクラブ競技のタイトルホルダーとなったのは初めて、と快挙達成が話題になっている。

写真:スタートの様子 大会規定により女子はJGAハンデにプラス4打のアンダーハンデ競技、ティーは男子より前の白マークからのプレーとはいえ、40歳代のシングルハンデを持つ、バリバリの現役男子選手を寄せ付けなかったプレーは快挙だ。
 最終日は最終組でハンデ4、49歳の熊谷卓也さん、最近めきめき力をつけた45歳小野智顧さん(ハンデ8)もいて和気あいあいのスタート。アウトを終わって熊谷さんが36、斉藤さん43と差は開いたが、インに入り斉藤さんが調子を上げ16番まで1バーディー、2ボギーと好調。これに対して熊谷さんは15番でダブルボギーをたたいたからたまらない、あっという間に逆転。斉藤さんは最終ホールをダブルボギーとしたが、39、通算82、2日間140、ネット4アンダー、熊谷さんらに3打差の圧勝となった。(成績は別項)

 「2ラウンドを80で回れば優勝のチャンスがあると臨んだ。予選で78と予想を上回る好スタートを切れたが、白ティーとはいえロングホールは540ヤード超の長いホールで私には厳しいセンッティングだったのでマイペースを守っていくしかないと頑張りました。決勝では、全日本の大会に出場、頑張った時のことを思い出しながら、私には13年間の経験があるんだ、勝負はこうやるんだよ、と自分に言い聞かせながらやりました」と強い気持ちでプレーしたという。

 青森県弘前市生まれ。社交ダンス選手権の全国大会に出場するなど競技志向。ゴルフを覚えてからは競技にのめりこんだ。結婚、出産、青森市内でのクラブ経営の合間に東奥CC、夏泊ゴルフリンクスのメンバーとなった。50歳となり,JGA主催の女子シニア選手権に参戦、以来13年間、予選から挑戦、過去2回8位に食い込みシード権を獲得するなど活躍中。
 青森は雪国でゴルフシーズンは年8か月。全国の出場選手からはその奮闘ぶりに「雪国からよく頑張っている」と驚きと礼賛の声が寄せられた。「国体などは若い選手に任せ東北を中心に女子競技にはげんでいる」昨年は東北アンダーハンデ競技優勝。夏泊ゴルフリンクスでは女子委員会委員長を務めクラブ対抗や東北女子アマのタイトルを手にした。
 夏泊ゴルフリンクスでは女子委員長として恒例の女子クラブ選手権、クラブ対抗に先頭に立って参戦、“クラチャン”は不敗伝説を継続中。そうした中でも伝統の理事長杯優勝は格別の意味を持つようだ。こんなことを語った。
 「伝統のクラブ選手権は男女を問わず参加できる競技ですが、スクラッチ競技(ハンデキャップなしの大会)は女子には勝つことができない。その点、アンダーハンデで誰でも自分の力を発揮できれば相応の成績が出せる理事長杯に勝ったことはゴルファーにとっては意味のあること。また特に女性にとっては、励みになった私の優勝だったかと思います」

 競技委員長の加藤さん「いやあ、立派なものです。素晴らしい」
 最上支配人。「今年ほど面白かった理事長杯は初めてでした」

 表彰式終了後、斉藤さんは競技委員長にかき氷をごちそうになった。そして、そのとき、男子の選手たちはコースのラウンドに出ていったという。ハンデがあろうとなんであろうと、自らの力を発揮できず、その上をいったのが女性であろうが誰であろうが、自らの努力の足りなさを戒めることこそがゴルファーの道。夏泊ゴルフリンクスの夏の異変の顛末であった。

 さて、筆者の見解。今回、敗れた男子選手には心からのお悔やみを申し上げる次第、というしかない。なぜなら、そのくやしさ味わった一人こそ、この筆者であるからだ。普段、なにかとグリーンを読んでもらったり風向き、落としどころを適切に教えられながらも期待に応えられないゴルファーの一人として、斉藤さんの強さには、こんなことがあっても当たり前、と面白がっている。そんな達観を男たちに与えて斉藤さん。東京から電話を入れるとホームグラウンドの青森市・山の手の練習場,梨の木ゴルフガーデンにいらっしゃった。

 ―よく練習しますね、というと“なにいってんですか”というニュアンスでこんな返事が、、、。
 「練習なんかしませんよ。200発くらい、毎日打つだけです。500、600なんか打つことはないです、このごろは」
 ゴルフへの敬意、礼を失しないお付き合いの仕方、という言葉が浮かんだ。キチンと向き合った姿勢が快挙をもたらした。

2016年6月3日

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